第一編 総則

   第一章 通則

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第一条 (国内犯)

 この法律は、  日本国内 において罪を犯したすべての者に適用する。

2  日本国外にある日本船舶又は  日本航空機内 において罪を犯した者についても、前項と  同様 とする。

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第二条 (すべての者の国外犯)

 この法律は、  日本国外 において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。

一  削除

二  第七十七条から第七十九条まで(  内乱 、予備及び  陰謀 、内乱等幇助)の罪

三  第八十一条(外患誘致)、  第八十二条 (外患援助)、  第八十七条 (未遂罪)及び  第八十八条 (予備及び  陰謀 )の罪

四  第百四十八条(通貨偽造及び  行使等 )の罪及びその未遂罪

五  第百五十四条(詔書偽造等)、  第百五十五条 (公文書偽造等)、  第百五十七条 (公正証書原本不実記載等)、  第百五十八条 (偽造公文書行使等)及び  公務所 又は公務員によって作られるべき  電磁的記録 に係る第百六十一条の二(  電磁的記録不正作出 及び供用)の罪

六  第百六十二条(有価証券偽造等)及び  第百六十三条 (偽造有価証券行使等)の罪

七  第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(  支払用 カード電磁的記録不正作出等、  不正電磁的記録 カード所持、  支払用 カード電磁的記録不正作出準備、  未遂罪 )の罪

八  第百六十四条から第百六十六条まで(  御璽偽造 及び不正使用等、  公印偽造 及び不正使用等、  公記号偽造 及び不正使用等)の  罪並 びに第百六十四条第二項、  第百六十五条第二項 及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪

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第三条 (国民の国外犯)

 この法律は、  日本国外 において次に掲げる罪を犯した日本国民に  適用 する。

一  第百八条(現住建造物等放火)及び  第百九条第一項 (非現住建造物等放火)の罪、これらの  規定 の例により処断すべき  罪並 びにこれらの罪の未遂罪

二  第百十九条(現住建造物等浸害)の罪

三  第百五十九条から第百六十一条まで(  私文書偽造等 、虚偽診断書等作成、  偽造私文書等行使 )及び前条第五号に  規定 する電磁的記録以外の  電磁的記録 に係る第百六十一条の二の罪

四  第百六十七条(私印偽造及び  不正使用等 )の罪及び同条第二項の罪の未遂罪

五  第百七十六条から第百七十九条まで(  強制 わいせつ、強姦、  準強制 わいせつ及び準強姦、  集団強姦等 、未遂罪)、  第百八十一条 (強制わいせつ  等致死傷 )及び第百八十四条(  重婚 )の罪

六  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪

七  第二百四条(傷害)及び  第二百五条 (傷害致死)の罪

八  第二百十四条から第二百十六条まで(  業務上堕胎 及び同致死傷、  不同意堕胎 、不同意堕胎致死傷)の罪

九  第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び  同条 の罪に係る第二百十九条(  遺棄等致死傷 )の罪

十  第二百二十条(逮捕及び  監禁 )及び第二百二十一条(  逮捕等致死傷 )の罪

十一  第二百二十四条から第二百二十八条まで(  未成年者略取 及び誘拐、  営利目的等略取 及び誘拐、身の  代金目的略取等 、所在国外移送目的略取及び  誘拐 、人身売買、  被略取者等所在国外移送 、被略取者引渡し等、  未遂罪 )の罪

十二  第二百三十条(名誉毀損)の罪

十三  第二百三十五条から第二百三十六条まで(  窃盗 、不動産侵奪、  強盗 )、第二百三十八条から  第二百四十一条 まで(事後強盗、  昏酔強盗 、強盗致死傷、  強盗強姦 及び同致死)及び  第二百四十三条 (未遂罪)の罪

十四  第二百四十六条から第二百五十条まで(  詐欺 、電子計算機使用詐欺、  背任 、準詐欺、  恐喝 、未遂罪)の罪

十五  第二百五十三条(業務上横領)の罪

十六  第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪

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第三条の二 (国民以外の者の国外犯)

 この法律は、  日本国外 において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した  日本国民以外 の者に適用する。

一  第百七十六条から第百七十九条まで(  強制 わいせつ、強姦、  準強制 わいせつ及び準強姦、  集団強姦等 、未遂罪)及び  第百八十一条 (強制わいせつ  等致死傷 )の罪

二  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪

三  第二百四条(傷害)及び  第二百五条 (傷害致死)の罪

四  第二百二十条(逮捕及び  監禁 )及び第二百二十一条(  逮捕等致死傷 )の罪

五  第二百二十四条から第二百二十八条まで(  未成年者略取 及び誘拐、  営利目的等略取 及び誘拐、身の  代金目的略取等 、所在国外移送目的略取及び  誘拐 、人身売買、  被略取者等所在国外移送 、被略取者引渡し等、  未遂罪 )の罪

六  第二百三十六条(強盗)及び  第二百三十八条 から第二百四十一条まで(  事後強盗 、昏酔強盗、  強盗致死傷 、強盗強姦及び  同致死 )の罪並びにこれらの罪の未遂罪

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第四条 (公務員の国外犯)

 この法律は、  日本国外 において次に掲げる罪を犯した日本国の  公務員 に適用する。

一  第百一条(看守者等による  逃走援助 )の罪及びその未遂罪

二  第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪

三  第百九十三条(公務員職権濫用)、  第百九十五条第二項 (特別公務員暴行陵虐)及び  第百九十七条 から第百九十七条の四まで(  収賄 、受託収賄及び  事前収賄 、第三者供賄、  加重収賄 及び事後収賄、あっせん  収賄 )の罪並びに  第百九十五条第二項 の罪に係る第百九十六条(  特別公務員職権濫用等致死傷 )の罪

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第四条の二 (条約による国外犯)

 第二条から前条までに  規定 するもののほか、この法律は、  日本国外 において、第二編の罪であって  条約 により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に  適用 する。

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第五条 (外国判決の効力)

 外国において確定裁判を受けた者であっても、  同一 の行為について更に  処罰 することを妨げない。ただし、犯人が既に  外国 において言い渡された刑の全部又は  一部 の執行を受けたときは、刑の  執行 を減軽し、又は  免除 する。

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第六条 (刑の変更)

 犯罪後の法律によって刑の  変更 があったときは、その軽いものによる。

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第七条 (定義)

 この法律において「  公務員 」とは、国又は地方公共団体の  職員 その他法令により  公務 に従事する  議員 、委員その他の  職員 をいう。

2  この法律において「  公務所 」とは、官公庁その  他公務員 が職務を行う所をいう。

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第七条の二

 この法律において「  電磁的記録 」とは、電子的方式、  磁気的方式 その他人の  知覚 によっては認識することができない  方式 で作られる記録であって、  電子計算機 による情報処理の用に供されるものをいう。

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第八条 (他の法令の罪に対する適用)

 この編の規定は、他の  法令 の罪についても、適用する。ただし、その  法令 に特別の  規定 があるときは、この限りでない。

   第二章 刑

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第九条 (刑の種類)

 死刑、懲役、  禁錮 、罰金、  拘留 及び科料を  主刑 とし、没収を  付加刑 とする。

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第十条 (刑の軽重)

 主刑の軽重は、  前条 に規定する  順序 による。ただし、無期の  禁錮 と有期の  懲役 とでは禁錮を重い刑とし、  有期 の禁錮の  長期 が有期の  懲役 の長期の  二倍 を超えるときも、禁錮を重い刑とする。

2  同種の刑は、長期の長いもの又は  多額 の多いものを重い刑とし、長期又は  多額 が同じであるときは、短期の長いもの又は  寡額 の多いものを重い刑とする。

3  二個以上の死刑又は  長期 若しくは多額及び  短期 若しくは寡額が同じである  同種 の刑は、犯情によってその  軽重 を定める。

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第十一条 (死刑)

 死刑は、刑事施設内において、  絞首 して執行する。

2  死刑の言渡しを受けた者は、その  執行 に至るまで刑事施設に  拘置 する。

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第十二条 (懲役)

 懲役は、無期及び  有期 とし、有期懲役は、  一月以上二十年以下 とする。

2  懲役は、刑事施設に  拘置 して所定の  作業 を行わせる。

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第十三条 (禁錮)

 禁錮は、無期及び  有期 とし、有期禁錮は、  一月以上二十年以下 とする。

2  禁錮は、刑事施設に  拘置 する。

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第十四条 (有期の懲役及び禁錮の加減の限度)

 死刑又は無期の  懲役 若しくは禁錮を  減軽 して有期の  懲役 又は禁錮とする  場合 においては、その長期を  三十年 とする。

2  有期の懲役又は  禁錮 を加重する  場合 においては三十年にまで上げることができ、これを  減軽 する場合においては  一月未満 に下げることができる。

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第十五条 (罰金)

 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを  減軽 する場合においては、  一万円未満 に下げることができる。

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第十六条 (拘留)

 拘留は、一日以上三十日未満とし、  刑事施設 に拘置する。

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第十七条 (科料)

 科料は、千円以上一万円未満とする。

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第十八条 (労役場留置)

 罰金を完納することができない者は、  一日以上二年以下 の期間、  労役場 に留置する。

2  科料を完納することができない者は、  一日以上三十日以下 の期間、  労役場 に留置する。

3  罰金を併科した  場合 又は罰金と  科料 とを併科した  場合 における留置の  期間 は、三年を超えることができない。  科料 を併科した  場合 における留置の  期間 は、六十日を超えることができない。

4  罰金又は科料の  言渡 しをするときは、その言渡しとともに、  罰金 又は科料を  完納 することができない場合における  留置 の期間を定めて言い渡さなければならない。

5  罰金については裁判が  確定 した後三十日以内、  科料 については裁判が  確定 した後十日以内は、  本人 の承諾がなければ  留置 の執行をすることができない。

6  罰金又は科料の  一部 を納付した者についての  留置 の日数は、その  残額 を留置一日の  割合 に相当する  金額 で除して得た日数(その  日数 に一日未満の  端数 を生じるときは、これを一日とする。)とする。

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第十九条 (没収)

 次に掲げる物は、没収することができる。

一  犯罪行為を組成した物

二  犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物

三  犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の  報酬 として得た物

四  前号に掲げる物の対価として得た物

2  没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、  犯人以外 の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を  知っ て取得したものであるときは、これを  没収 することができる。

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第十九条の二 (追徴)

 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の  全部 又は一部を  没収 することができないときは、その価額を  追徴 することができる。

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第二十条 (没収の制限)

 拘留又は科料のみに当たる罪については、  特別 の規定がなければ、  没収 を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の  没収 については、この限りでない。

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第二十一条 (未決勾留日数の本刑算入)

 未決勾留の日数は、その  全部 又は一部を  本刑 に算入することができる。

   第三章 期間計算

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第二十二条 (期間の計算)

 月又は年によって期間を定めたときは、暦に  従っ て計算する。

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第二十三条 (刑期の計算)

 刑期は、裁判が  確定 した日から起算する。

2  拘禁されていない日数は、  裁判 が確定した後であっても、  刑期 に算入しない。

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第二十四条 (受刑等の初日及び釈放)

 受刑の初日は、  時間 にかかわらず、一日として  計算 する。時効期間の  初日 についても、同様とする。

2  刑期が終了した  場合 における釈放は、その  終了 の日の翌日に行う。

   第四章 刑の執行猶予

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第二十五条 (執行猶予)

 次に掲げる者が三年以下の  懲役 若しくは禁錮又は  五十万円以下 の罰金の  言渡 しを受けたときは、情状により、  裁判 が確定した日から  一年以上五年以下 の期間、その  執行 を猶予することができる。

一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その  執行 を終わった日又はその執行の  免除 を得た日から五年以内に  禁錮以上 の刑に処せられたことがない者

2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその  執行 を猶予された者が  一年以下 の懲役又は  禁錮 の言渡しを受け、  情状 に特に酌量すべきものがあるときも、  前項 と同様とする。ただし、  次条第一項 の規定により  保護観察 に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

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第二十五条の二 (保護観察)

 前条第一項の場合においては  猶予 の期間中保護観察に付することができ、  同条第二項 の場合においては  猶予 の期間中保護観察に付する。

2  保護観察は、行政官庁の  処分 によって仮に解除することができる。

3  保護観察を仮に解除されたときは、  前条第二項 ただし書及び第二十六条の  二第二号 の規定の  適用 については、その処分を取り消されるまでの間は、  保護観察 に付せられなかったものとみなす。

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第二十六条 (執行猶予の必要的取消し)

 次に掲げる場合においては、刑の  執行猶予 の言渡しを取り消さなければならない。ただし、  第三号 の場合において、  猶予 の言渡しを受けた者が  第二十五条第一項第二号 に掲げる者であるとき、又は次条第三号に  該当 するときは、この限りでない。

一  猶予の期間内に更に罪を犯して  禁錮以上 の刑に処せられ、その刑について執行猶予の  言渡 しがないとき。

二  猶予の言渡し前に犯した他の罪について  禁錮以上 の刑に処せられ、その刑について執行猶予の  言渡 しがないとき。

三  猶予の言渡し前に他の罪について  禁錮以上 の刑に処せられたことが発覚したとき。

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第二十六条の二 (執行猶予の裁量的取消し)

 次に掲げる場合においては、刑の  執行猶予 の言渡しを取り消すことができる。

一  猶予の期間内に更に罪を犯し、  罰金 に処せられたとき。

二  第二十五条の二第一項の  規定 により保護観察に付せられた者が  遵守 すべき事項を  遵守 せず、その情状が重いとき。

三  猶予の言渡し前に他の罪について  禁錮以上 の刑に処せられ、その執行を  猶予 されたことが発覚したとき。

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第二十六条の三 (他の刑の執行猶予の取消し)

 前二条の規定により  禁錮以上 の刑の執行猶予の  言渡 しを取り消したときは、執行猶予中の他の  禁錮以上 の刑についても、その猶予の  言渡 しを取り消さなければならない。

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第二十七条 (猶予期間経過の効果)

 刑の執行猶予の  言渡 しを取り消されることなく猶予の  期間 を経過したときは、刑の  言渡 しは、効力を失う。

   第五章 仮保釈

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第二十八条 (仮釈放)

 懲役又は禁錮に処せられた者に  改悛 の状があるときは、有期刑についてはその  刑期 の三分の一を、  無期刑 については十年を  経過 した後、行政官庁の  処分 によって仮に釈放することができる。

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第二十九条 (仮釈放の取消し)

 次に掲げる場合においては、  仮釈放 の処分を取り消すことができる。

一  仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。

二  仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。

三  仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の  執行 をすべきとき。

四  仮釈放中に遵守すべき  事項 を遵守しなかったとき。

2  仮釈放の処分を取り消したときは、  釈放中 の日数は、  刑期 に算入しない。

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第三十条 (仮出場)

 拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、  行政官庁 の処分によって仮に  出場 を許すことができる。

2  罰金又は科料を  完納 することができないため留置された者も、  前項 と同様とする。

   第六章 刑の時効及び刑の消滅

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第三十一条 (刑の時効)

 刑の言渡しを受けた者は、  時効 によりその執行の  免除 を得る。

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第三十二条 (時効の期間)

 時効は、刑の言渡しが  確定 した後、次の期間その  執行 を受けないことによって完成する。

一  死刑については三十年

二  無期の懲役又は  禁錮 については二十年

三  十年以上の有期の  懲役 又は禁錮については十五年

四  三年以上十年未満の懲役又は  禁錮 については十年

五  三年未満の懲役又は  禁錮 については五年

六  罰金については三年

七  拘留、科料及び  没収 については一年

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第三十三条 (時効の停止)

 時効は、法令により  執行 を猶予し、又は  停止 した期間内は、  進行 しない。

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第三十四条 (時効の中断)

 死刑、懲役、  禁錮 及び拘留の  時効 は、刑の言渡しを受けた者をその  執行 のために拘束することによって  中断 する。

2  罰金、科料及び  没収 の時効は、  執行行為 をすることによって中断する。

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第三十四条の二 (刑の消滅)

 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその  執行 の免除を得た者が  罰金以上 の刑に処せられないで十年を  経過 したときは、刑の言渡しは、  効力 を失う。罰金以下の刑の  執行 を終わり又はその執行の  免除 を得た者が罰金以上の刑に処せられないで  五年 を経過したときも、  同様 とする。

2  刑の免除の  言渡 しを受けた者が、その言渡しが  確定 した後、罰金以上の刑に処せられないで  二年 を経過したときは、刑の  免除 の言渡しは、  効力 を失う。

   第七章 犯罪の不成立及び刑の減免

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第三十五条 (正当行為)

 法令又は正当な  業務 による行為は、罰しない。

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第三十六条 (正当防衛)

 急迫不正の侵害に対して、  自己 又は他人の  権利 を防衛するため、やむを得ずにした  行為 は、罰しない。

2  防衛の程度を超えた  行為 は、情状により、その刑を  減軽 し、又は免除することができる。

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第三十七条 (緊急避難)

 自己又は他人の  生命 、身体、  自由 又は財産に対する  現在 の危難を避けるため、やむを得ずにした  行為 は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった  場合 に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた  行為 は、情状により、その刑を  減軽 し、又は免除することができる。

2  前項の規定は、  業務上特別 の義務がある者には、  適用 しない。

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第三十八条 (故意)

 罪を犯す意思がない  行為 は、罰しない。ただし、法律に  特別 の規定がある  場合 は、この限りでない。

2  重い罪に当たるべき行為をしたのに、  行為 の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって  処断 することはできない。

3  法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、  情状 により、その刑を減軽することができる。

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第三十九条 (心神喪失及び心神耗弱)

 心神喪失者の行為は、罰しない。

2  心神耗弱者の行為は、その刑を  減軽 する。

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第四十条  削除

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第四十一条 (責任年齢)

 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。

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第四十二条 (自首等)

 罪を犯した者が捜査機関に  発覚 する前に自首したときは、その刑を  減軽 することができる。

2  告訴がなければ公訴を  提起 することができない罪について、告訴をすることができる者に対して  自己 の犯罪事実を告げ、その  措置 にゆだねたときも、前項と  同様 とする。

   第八章 未遂罪

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第四十三条 (未遂減免)

 犯罪の実行に  着手 してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、  自己 の意思により  犯罪 を中止したときは、その刑を  減軽 し、又は免除する。

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第四十四条 (未遂罪)

 未遂を罰する場合は、  各本条 で定める。

   第九章 併合罪

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第四十五条 (併合罪)

 確定裁判を経ていない二個以上の罪を  併合罪 とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する  確定裁判 があったときは、その罪とその裁判が  確定 する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

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第四十六条 (併科の制限)

 併合罪のうちの一個の罪について  死刑 に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2  併合罪のうちの一個の罪について  無期 の懲役又は  禁錮 に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、  科料 及び没収は、この限りでない。

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第四十七条 (有期の懲役及び禁錮の加重)

 併合罪のうちの二個以上の罪について  有期 の懲役又は  禁錮 に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその  二分 の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の  長期 の合計を超えることはできない。

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第四十八条 (罰金の併科等)

 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、  第四十六条第一項 の場合は、この限りでない。

2  併合罪のうちの二個以上の罪について  罰金 に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の  多額 の合計以下で  処断 する。

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第四十九条 (没収の付加)

 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない  場合 であっても、他の罪について没収の  事由 があるときは、これを付加することができる。

2  二個以上の没収は、  併科 する。

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第五十条 (余罪の処理)

 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ  確定裁判 を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に  処断 する。

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第五十一条 (併合罪に係る二個以上の刑の執行)

 併合罪について二個以上の  裁判 があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、  死刑 を執行すべきときは、  没収 を除き、他の刑を執行せず、  無期 の懲役又は  禁錮 を執行すべきときは、  罰金 、科料及び  没収 を除き、他の刑を執行しない。

2  前項の場合における  有期 の懲役又は  禁錮 の執行は、その最も重い罪について定めた刑の  長期 にその二分の一を加えたものを超えることができない。

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第五十二条 (一部に大赦があった場合の措置)

 併合罪について処断された者がその  一部 の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。

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第五十三条 (拘留及び科料の併科)

 拘留又は科料と他の刑とは、  併科 する。ただし、第四十六条の  場合 は、この限りでない。

2  二個以上の拘留又は  科料 は、併科する。

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第五十四条 (一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

 一個の行為が  二個以上 の罪名に触れ、又は  犯罪 の手段若しくは  結果 である行為が他の  罪名 に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

2  第四十九条第二項の規定は、  前項 の場合にも、  適用 する。

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第五十五条  削除

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   第十章 累犯

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第五十六条 (再犯)

 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその  執行 の免除を得た日から  五年以内 に更に罪を犯した場合において、その者を  有期懲役 に処するときは、再犯とする。

2  懲役に当たる罪と同質の罪により  死刑 に処せられた者がその執行の  免除 を得た日又は減刑により  懲役 に減軽されてその  執行 を終わった日若しくはその執行の  免除 を得た日から五年以内に更に罪を犯した  場合 において、その者を有期懲役に処するときも、  前項 と同様とする。

3  併合罪について処断された者が、その  併合罪 のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため  懲役 に処せられなかったものであるときは、再犯に関する  規定 の適用については、  懲役 に処せられたものとみなす。

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第五十七条 (再犯加重)

 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の  長期 の二倍以下とする。

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第五十八条  削除

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第五十九条 (三犯以上の累犯)

 三犯以上の者についても、再犯の例による。

   第十一章 共犯

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第六十条 (共同正犯)

 二人以上共同して犯罪を  実行 した者は、すべて正犯とする。

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第六十一条 (教唆)

 人を教唆して  犯罪 を実行させた者には、  正犯 の刑を科する。

2  教唆者を教唆した者についても、  前項 と同様とする。

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第六十二条 (幇助)

 正犯を幇助した者は、  従犯 とする。

2  従犯を教唆した者には、  従犯 の刑を科する。

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第六十三条 (従犯減軽)

 従犯の刑は、正犯の刑を  減軽 する。

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第六十四条 (教唆及び幇助の処罰の制限)

 拘留又は科料のみに処すべき罪の  教唆者 及び従犯は、  特別 の規定がなければ、罰しない。

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第六十五条 (身分犯の共犯)

 犯人の身分によって  構成 すべき犯罪行為に  加功 したときは、身分のない者であっても、  共犯 とする。

2  身分によって特に刑の軽重があるときは、  身分 のない者には通常の刑を科する。

   第十二章 酌量減軽

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第六十六条 (酌量減軽)

 犯罪の情状に  酌量 すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

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第六十七条 (法律上の加減と酌量減軽)

 法律上刑を加重し、又は  減軽 する場合であっても、  酌量減軽 をすることができる。

   第十三章 加重減軽の方法

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第六十八条 (法律上の減軽の方法)

 法律上刑を減軽すべき  一個 又は二個以上の  事由 があるときは、次の例による。

一  死刑を減軽するときは、  無期 の懲役若しくは  禁錮 又は十年以上の  懲役 若しくは禁錮とする。

二  無期の懲役又は  禁錮 を減軽するときは、  七年以上 の有期の  懲役 又は禁錮とする。

三  有期の懲役又は  禁錮 を減軽するときは、その  長期 及び短期の  二分 の一を減ずる。

四  罰金を減軽するときは、その  多額 及び寡額の  二分 の一を減ずる。

五  拘留を減軽するときは、その  長期 の二分の一を減ずる。

六  科料を減軽するときは、その  多額 の二分の一を減ずる。

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第六十九条 (法律上の減軽と刑の選択)

 法律上刑を減軽すべき  場合 において、各本条に  二個以上 の刑名があるときは、まず  適用 する刑を定めて、その刑を減軽する。

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第七十条 (端数の切捨て)

 懲役、禁錮又は  拘留 を減軽することにより  一日 に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。

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第七十一条 (酌量減軽の方法)

 酌量減軽をするときも、第六十八条及び  前条 の例による。

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第七十二条 (加重減軽の順序)

 同時に刑を加重し、又は  減軽 するときは、次の順序による。

一  再犯加重

二  法律上の減軽

三  併合罪の加重

四  酌量減軽