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第三百五十条の十四

 即決裁判手続において懲役又は  禁錮 の言渡しをする  場合 には、その刑の執行猶予の  言渡 しをしなければならない。

  第三編 上訴

   第一章 通則 -------------------------------------------------

第三百五十一条

 検察官又は被告人は、  上訴 をすることができる。

○2  第二百六十六条第二号の規定により  裁判所 の審判に付された  事件 と他の事件とが  併合 して審判され、  一個 の裁判があつた  場合 には、第二百六十八条第二項の  規定 により検察官の  職務 を行う弁護士及び  当該他 の事件の  検察官 は、その裁判に対し  各々独立 して上訴をすることができる。

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第三百五十二条

 検察官又は被告人以外の者で  決定 を受けたものは、抗告をすることができる。

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第三百五十三条

 被告人の法定代理人又は  保佐人 は、被告人のため  上訴 をすることができる。

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第三百五十四条

 勾留に対しては、勾留の  理由 の開示があつたときは、その  開示 の請求をした者も、  被告人 のため上訴をすることができる。その  上訴 を棄却する  決定 に対しても、同様である。

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第三百五十五条

 原審における代理人又は  弁護人 は、被告人のため  上訴 をすることができる。

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第三百五十六条

 前三条の上訴は、  被告人 の明示した  意思 に反してこれをすることができない。

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第三百五十七条

 上訴は、裁判の  一部 に対してこれをすることができる。部分を限らないで  上訴 をしたときは、裁判の  全部 に対してしたものとみなす。

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第三百五十八条

 上訴の提起期間は、  裁判 が告知された日から  進行 する。

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第三百五十九条

 検察官、被告人又は  第三百五十二条 に規定する者は、  上訴 の放棄又は  取下 をすることができる。

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第三百六十条

 第三百五十三条又は第三百五十四条に  規定 する者は、書面による  被告人 の同意を得て、  上訴 の放棄又は  取下 をすることができる。

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第三百六十条の二

 死刑又は無期の  懲役 若しくは禁錮に処する  判決 に対する上訴は、  前二条 の規定にかかわらず、これを  放棄 することができない。

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第三百六十条の三

 上訴放棄の申立は、  書面 でこれをしなければならない。

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第三百六十一条

 上訴の放棄又は  取下 をした者は、その事件について更に  上訴 をすることができない。上訴の  放棄 又は取下に  同意 をした被告人も、  同様 である。

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第三百六十二条

 第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により  上訴 をすることができる者は、自己又は  代人 の責に帰することができない事由によつて  上訴 の提起期間内に  上訴 をすることができなかつたときは、原裁判所に  上訴権回復 の請求をすることができる。

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第三百六十三条

 上訴権回復の請求は、  事由 が止んだ日から上訴の  提起期間 に相当する  期間内 にこれをしなければならない。

○2  上訴権回復の請求をする者は、その  請求 と同時に  上訴 の申立をしなければならない。

第三百六十四条

 上訴権回復の請求についてした  決定 に対しては、即時抗告をすることができる。

第三百六十五条

 上訴権回復の請求があつたときは、  原裁判所 は、前条の  決定 をするまで裁判の  執行 を停止する  決定 をすることができる。この場合には、  被告人 に対し勾留状を発することができる。

第三百六十六条

 刑事施設にいる被告人が  上訴 の提起期間内に  上訴 の申立書を  刑事施設 の長又はその代理者に差し出したときは、  上訴 の提起期間内に  上訴 をしたものとみなす。

○2  被告人が自ら申立書を作ることができないときは、  刑事施設 の長又はその代理者は、これを  代書 し、又は所属の  職員 にこれをさせなければならない。

第三百六十七条

 前条の規定は、  刑事施設 にいる被告人が  上訴 の放棄若しくは  取下 げ又は上訴権回復の  請求 をする場合にこれを  準用 する。

第三百六十八条  削除 第三百六十八条

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第三百六十九条  削除 第三百六十九条

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第三百七十条  削除 第三百七十条

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第三百七十一条  削除 第三百七十一条

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   第二章 控訴

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第三百七十二条

 控訴は、地方裁判所、  家庭裁判所 又は簡易裁判所がした  第一審 の判決に対してこれをすることができる。

第三百七十三条

 控訴の提起期間は、  十四日 とする。

第三百七十四条

 控訴をするには、申立書を  第一審裁判所 に差し出さなければならない。

第三百七十五条

 控訴の申立が明らかに  控訴権 の消滅後にされたものであるときは、  第一審裁判所 は、決定でこれを  棄却 しなければならない。この決定に対しては、  即時抗告 をすることができる。

第三百七十六条

 控訴申立人は、裁判所の  規則 で定める期間内に  控訴趣意書 を控訴裁判所に差し出さなければならない。

○2  控訴趣意書には、この法律又は  裁判所 の規則の定めるところにより、  必要 な疎明資料又は  検察官 若しくは弁護人の  保証書 を添附しなければならない。

第三百七十七条

 左の事由があることを  理由 として控訴の  申立 をした場合には、  控訴趣意書 に、その事由があることの  充分 な証明をすることができる旨の  検察官 又は弁護人の  保証書 を添附しなければならない。

一  法律に従つて判決裁判所を  構成 しなかつたこと。

二  法令により判決に  関与 することができない裁判官が  判決 に関与したこと。

三  審判の公開に関する  規定 に違反したこと。

第三百七十八条

 左の事由があることを  理由 として控訴の  申立 をした場合には、  控訴趣意書 に、訴訟記録及び  原裁判所 において取り調べた証拠に現われている  事実 であつてその事由があることを信ずるに足りるものを  援用 しなければならない。

一  不法に管轄又は  管轄違 を認めたこと。

二  不法に、公訴を  受理 し、又はこれを棄却したこと。

三  審判の請求を受けた  事件 について判決をせず、又は  審判 の請求を受けない  事件 について判決をしたこと。

四  判決に理由を附せず、又は  理由 にくいちがいがあること。

第三百七十九条

 前二条の場合を除いて、  訴訟手続 に法令の  違反 があつてその違反が  判決 に影響を及ぼすことが明らかであることを  理由 として控訴の  申立 をした場合には、  控訴趣意書 に、訴訟記録及び  原裁判所 において取り調べた証拠に現われている  事実 であつて明らかに判決に  影響 を及ぼすべき法令の  違反 があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十条

 法令の適用に誤があつてその誤が  判決 に影響を及ぼすことが明らかであることを  理由 として控訴の  申立 をした場合には、  控訴趣意書 に、その誤及びその誤が明らかに判決に  影響 を及ぼすべきことを示さなければならない。

第三百八十一条

 刑の量定が  不当 であることを理由として  控訴 の申立をした  場合 には、控訴趣意書に、  訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた  証拠 に現われている事実であつて刑の  量定 が不当であることを信ずるに足りるものを  援用 しなければならない。

第三百八十二条

 事実の誤認があつてその  誤認 が判決に  影響 を及ぼすことが明らかであることを理由として  控訴 の申立をした  場合 には、控訴趣意書に、  訴訟記録 及び原裁判所において取り調べた  証拠 に現われている事実であつて明らかに  判決 に影響を及ぼすべき  誤認 があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

第三百八十二条の二

 やむを得ない事由によつて  第一審 の弁論終結前に  取調 を請求することができなかつた  証拠 によつて証明することのできる  事実 であつて前二条に  規定 する控訴申立の  理由 があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録及び  原裁判所 において取り調べた証拠に現われている  事実以外 の事実であつても、  控訴趣意書 にこれを援用することができる。

○2  第一審の弁論終結後判決前に生じた  事実 であつて前二条に  規定 する控訴申立の  理由 があることを信ずるに足りるものについても、前項と  同様 である。

○3  前二項の場合には、  控訴趣意書 に、その事実を  疎明 する資料を  添附 しなければならない。第一項の  場合 には、やむを得ない事由によつてその  証拠 の取調を  請求 することができなかつた旨を疎明する  資料 をも添附しなければならない。

第三百八十三条

 左の事由があることを  理由 として控訴の  申立 をした場合には、  控訴趣意書 に、その事由があることを  疎明 する資料を  添附 しなければならない。

一  再審の請求をすることができる  場合 にあたる事由があること。

二  判決があつた後に刑の廃止若しくは  変更 又は大赦があつたこと。

第三百八十四条

 控訴の申立は、  第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び前条に  規定 する事由があることを  理由 とするときに限り、これをすることができる。

第三百八十五条

 控訴の申立が  法令上 の方式に  違反 し、又は控訴権の  消滅後 にされたものであることが明らかなときは、控訴裁判所は、  決定 でこれを棄却しなければならない。

○2  前項の決定に対しては、  第四百二十八条第二項 の異議の  申立 をすることができる。この場合には、  即時抗告 に関する規定をも  準用 する。

第三百八十六条

 左の場合には、  控訴裁判所 は、決定で  控訴 を棄却しなければならない。

一  第三百七十六条第一項に定める期間内に  控訴趣意書 を差し出さないとき。

二  控訴趣意書がこの法律若しくは  裁判所 の規則で定める  方式 に違反しているとき、又は  控訴趣意書 にこの法律若しくは  裁判所 の規則の定めるところに従い  必要 な疎明資料若しくは  保証書 を添附しないとき。

三  控訴趣意書に記載された  控訴 の申立の  理由 が、明らかに第三百七十七条乃至第三百八十二条及び  第三百八十三条 に規定する  事由 に該当しないとき。

○2  前条第二項の規定は、  前項 の決定についてこれを  準用 する。

第三百八十七条

 控訴審では、弁護士以外の者を  弁護人 に選任することはできない。

第三百八十八条

 控訴審では、被告人のためにする  弁論 は、弁護人でなければ、これをすることができない。

第三百八十九条

 公判期日には、検察官及び  弁護人 は、控訴趣意書に基いて  弁論 をしなければならない。

第三百九十条

 控訴審においては、被告人は、  公判期日 に出頭することを要しない。ただし、  裁判所 は、五十万円(  刑法 、暴力行為等処罰に関する  法律 及び経済関係罰則の  整備 に関する法律の  罪以外 の罪については、当分の間、  五万円 )以下の  罰金 又は科料に当たる  事件以外 の事件について、  被告人 の出頭がその  権利 の保護のため  重要 であると認めるときは、被告人の  出頭 を命ずることができる。

第三百九十一条

 弁護人が出頭しないとき、又は  弁護人 の選任がないときは、この  法律 により弁護人を要する  場合 又は決定で  弁護人 を附した場合を除いては、  検察官 の陳述を聴いて  判決 をすることができる。

第三百九十二条

 控訴裁判所は、控訴趣意書に  包含 された事項は、これを  調査 しなければならない。

○2  控訴裁判所は、控訴趣意書に  包含 されない事項であつても、  第三百七十七条乃至第三百八十二条 及び第三百八十三条に  規定 する事由に関しては、  職権 で調査をすることができる。

第三百九十三条

 控訴裁判所は、前条の  調査 をするについて必要があるときは、  検察官 、被告人若しくは  弁護人 の請求により又は  職権 で事実の  取調 をすることができる。但し、第三百八十二条の二の  疎明 があつたものについては、刑の量定の  不当 又は判決に  影響 を及ぼすべき事実の  誤認 を証明するために欠くことのできない  場合 に限り、これを取り調べなければならない。

○2  控訴裁判所は、必要があると認めるときは、  職権 で、第一審判決後の刑の  量定 に影響を及ぼすべき  情状 につき取調をすることができる。

○3  前二項の取調は、  合議体 の構成員にこれをさせ、又は  地方裁判所 、家庭裁判所若しくは  簡易裁判所 の裁判官にこれを  嘱託 することができる。この場合には、  受命裁判官 及び受託裁判官は、  裁判所 又は裁判長と  同一 の権限を有する。

○4  第一項又は第二項の  規定 による取調をしたときは、  検察官 及び弁護人は、その  結果 に基いて弁論をすることができる。

第三百九十四条

 第一審において証拠とすることができた  証拠 は、控訴審においても、これを  証拠 とすることができる。

第三百九十五条

 控訴の申立が  法令上 の方式に  違反 し、又は控訴権の  消滅後 にされたものであるときは、判決で  控訴 を棄却しなければならない。

第三百九十六条

 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に  規定 する事由がないときは、  判決 で控訴を  棄却 しなければならない。

第三百九十七条

 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に  規定 する事由があるときは、  判決 で原判決を  破棄 しなければならない。

○2  第三百九十三条第二項の規定による  取調 の結果、  原判決 を破棄しなければ明らかに  正義 に反すると認めるときは、判決で  原判決 を破棄することができる。

第三百九十八条

 不法に、管轄違を言い渡し、又は  公訴 を棄却したことを  理由 として原判決を  破棄 するときは、判決で  事件 を原裁判所に差し戻さなければならない。

第三百九十九条

 不法に管轄を認めたことを  理由 として原判決を  破棄 するときは、判決で  事件 を管轄第一審裁判所に  移送 しなければならない。但し、控訴裁判所は、その  事件 について第一審の  管轄権 を有するときは、第一審として  審判 をしなければならない。

第四百条

 前二条に規定する  理由以外 の理由によつて  原判決 を破棄するときは、  判決 で、事件を  原裁判所 に差し戻し、又は原裁判所と  同等 の他の裁判所に  移送 しなければならない。但し、控訴裁判所は、  訴訟記録並 びに原裁判所及び  控訴裁判所 において取り調べた証拠によつて、直ちに  判決 をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に  判決 をすることができる。

第四百一条

 被告人の利益のため  原判決 を破棄する  場合 において、破棄の  理由 が控訴をした  共同被告人 に共通であるときは、その  共同被告人 のためにも原判決を  破棄 しなければならない。

第四百二条

 被告人が控訴をし、又は  被告人 のため控訴をした  事件 については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

第四百三条

 原裁判所が不法に  公訴棄却 の決定をしなかつたときは、  決定 で公訴を  棄却 しなければならない。

○2  第三百八十五条第二項の規定は、  前項 の決定についてこれを  準用 する。

第四百三条の二

 即決裁判手続においてされた判決に対する  控訴 の申立ては、  第三百八十四条 の規定にかかわらず、  当該判決 の言渡しにおいて示された罪となるべき  事実 について第三百八十二条に  規定 する事由があることを  理由 としては、これをすることができない。

○2  原裁判所が即決裁判手続によつて  判決 をした事件については、  第三百九十七条第一項 の規定にかかわらず、  控訴裁判所 は、当該判決の  言渡 しにおいて示された罪となるべき事実について  第三百八十二条 に規定する  事由 があることを理由としては、  原判決 を破棄することができない。

第四百四条

 第二編中公判に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、控訴の審判についてこれを準用する。   第三章 上告 -------------------------------------------------

第四百五条

 高等裁判所がした第一審又は  第二審 の判決に対しては、左の  事由 があることを理由として  上告 の申立をすることができる。

一  憲法の違反があること又は  憲法 の解釈に誤があること。

二  最高裁判所の判例と  相反 する判断をしたこと。

三  最高裁判所の判例がない  場合 に、大審院若しくは  上告裁判所 たる高等裁判所の  判例 又はこの法律施行後の  控訴裁判所 たる高等裁判所の  判例 と相反する  判断 をしたこと。

第四百六条

 最高裁判所は、前条の  規定 により上告をすることができる  場合以外 の場合であつても、  法令 の解釈に関する  重要 な事項を含むものと認められる  事件 については、その判決確定前に限り、  裁判所 の規則の定めるところにより、自ら  上告審 としてその事件を  受理 することができる。

第四百七条

 上告趣意書には、裁判所の  規則 の定めるところにより、上告の  申立 の理由を  明示 しなければならない。

第四百八条

 上告裁判所は、上告趣意書その他の  書類 によつて、上告の  申立 の理由がないことが明らかであると認めるときは、  弁論 を経ないで、判決で  上告 を棄却することができる。

第四百九条

 上告審においては、公判期日に  被告人 を召喚することを要しない。

第四百十条

 上告裁判所は、第四百五条各号に  規定 する事由があるときは、  判決 で原判決を  破棄 しなければならない。但し、判決に  影響 を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。

○2  第四百五条第二号又は第三号に  規定 する事由のみがある  場合 において、上告裁判所がその  判例 を変更して  原判決 を維持するのを  相当 とするときは、前項の  規定 は、これを適用しない。

第四百十一条

 上告裁判所は、第四百五条各号に  規定 する事由がない  場合 であつても、左の事由があつて  原判決 を破棄しなければ著しく  正義 に反すると認めるときは、判決で  原判決 を破棄することができる。

一  判決に影響を及ぼすべき  法令 の違反があること。

二  刑の量定が甚しく  不当 であること。

三  判決に影響を及ぼすべき  重大 な事実の  誤認 があること。

四  再審の請求をすることができる  場合 にあたる事由があること。

五  判決があつた後に刑の廃止若しくは  変更 又は大赦があつたこと。

第四百十二条

 不法に管轄を認めたことを  理由 として原判決を  破棄 するときは、判決で  事件 を管轄控訴裁判所又は  管轄第一審裁判所 に移送しなければならない。

第四百十三条

 前条に規定する  理由以外 の理由によつて  原判決 を破棄するときは、  判決 で、事件を  原裁判所 若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと  同等 の他の裁判所に  移送 しなければならない。但し、上告裁判所は、  訴訟記録並 びに原裁判所及び  第一審裁判所 において取り調べた証拠によつて、直ちに  判決 をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に  判決 をすることができる。

第四百十三条の二

 第一審裁判所が即決裁判手続によつて  判決 をした事件については、  第四百十一条 の規定にかかわらず、  上告裁判所 は、当該判決の  言渡 しにおいて示された罪となるべき事実について  同条第三号 に規定する  事由 があることを理由としては、  原判決 を破棄することができない。

第四百十四条

 前章の規定は、この  法律 に特別の定のある  場合 を除いては、上告の  審判 についてこれを準用する。

第四百十五条

 上告裁判所は、その判決の  内容 に誤のあることを発見したときは、  検察官 、被告人又は  弁護人 の申立により、  判決 でこれを訂正することができる。

○2  前項の申立は、  判決 の宣告があつた日から  十日以内 にこれをしなければならない。

○3  上告裁判所は、適当と認めるときは、  第一項 に規定する者の  申立 により、前項の  期間 を延長することができる。

第四百十六条

 訂正の判決は、  弁論 を経ないでもこれをすることができる。

第四百十七条

 上告裁判所は、訂正の  判決 をしないときは、速やかに決定で  申立 を棄却しなければならない。

○2  訂正の判決に対しては、  第四百十五条第一項 の申立をすることはできない。

第四百十八条

 上告裁判所の判決は、  宣告 があつた日から第四百十五条の  期間 を経過したとき、又はその  期間内 に同条第一項の  申立 があつた場合には  訂正 の判決若しくは  申立 を棄却する  決定 があつたときに、確定する。

   第四章 抗告

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第四百十九条

 抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の  規定 がある場合の外、  裁判所 のした決定に対してこれをすることができる。但し、この  法律 に特別の定のある  場合 は、この限りでない。

第四百二十条

 裁判所の管轄又は  訴訟手続 に関し判決前にした  決定 に対しては、この法律に特に  即時抗告 をすることができる旨の規定がある  場合 を除いては、抗告をすることはできない。

○2  前項の規定は、  勾留 、保釈、  押収 又は押収物の  還付 に関する決定及び  鑑定 のためにする留置に関する  決定 については、これを適用しない。

○3  勾留に対しては、前項の  規定 にかかわらず、犯罪の  嫌疑 がないことを理由として  抗告 をすることはできない。

第四百二十一条

 抗告は、即時抗告を除いては、  何時 でもこれをすることができる。但し、原決定を取り消しても  実益 がないようになつたときは、この限りでない。

第四百二十二条

 即時抗告の提起期間は、  三日 とする。

第四百二十三条

 抗告をするには、申立書を  原裁判所 に差し出さなければならない。

○2  原裁判所は、抗告を  理由 があるものと認めるときは、決定を  更正 しなければならない。抗告の  全部 又は一部を  理由 がないと認めるときは、申立書を受け取つた日から  三日以内 に意見書を添えて、これを  抗告裁判所 に送付しなければならない。

第四百二十四条

 抗告は、即時抗告を除いては、  裁判 の執行を  停止 する効力を有しない。但し、  原裁判所 は、決定で、  抗告 の裁判があるまで  執行 を停止することができる。

○2  抗告裁判所は、決定で  裁判 の執行を  停止 することができる。

第四百二十五条

 即時抗告の提起期間内及びその  申立 があつたときは、裁判の  執行 は、停止される。

第四百二十六条

 抗告の手続がその  規定 に違反したとき、又は  抗告 が理由のないときは、  決定 で抗告を  棄却 しなければならない。

○2  抗告が理由のあるときは、  決定 で原決定を取り消し、  必要 がある場合には、更に  裁判 をしなければならない。

第四百二十七条

 抗告裁判所の決定に対しては、  抗告 をすることはできない。

第四百二十八条

 高等裁判所の決定に対しては、  抗告 をすることはできない。

○2  即時抗告をすることができる旨の規定がある  決定並 びに第四百十九条及び  第四百二十条 の規定により  抗告 をすることができる決定で  高等裁判所 がしたものに対しては、その高等裁判所に  異議 の申立をすることができる。

○3  前項の異議の  申立 に関しては、抗告に関する  規定 を準用する。  即時抗告 をすることができる旨の規定がある  決定 に対する異議の  申立 に関しては、即時抗告に関する  規定 をも準用する。

第四百二十九条

 裁判官が左の裁判をした  場合 において、不服がある者は、  簡易裁判所 の裁判官がした  裁判 に対しては管轄地方裁判所に、その他の  裁判官 がした裁判に対してはその  裁判官所属 の裁判所にその  裁判 の取消又は  変更 を請求することができる。

一  忌避の申立を  却下 する裁判

二  勾留、保釈、  押収 又は押収物の  還付 に関する裁判

三  鑑定のため留置を命ずる裁判

四  証人、鑑定人、  通訳人 又は翻訳人に対して  過料 又は費用の  賠償 を命ずる裁判

五  身体の検査を受ける者に対して  過料 又は費用の  賠償 を命ずる裁判

○2  第四百二十条第三項の規定は、  前項 の請求についてこれを  準用 する。

○3  第一項の請求を受けた  地方裁判所 又は家庭裁判所は、  合議体 で決定をしなければならない。

○4  第一項第四号又は第五号の  裁判 の取消又は  変更 の請求は、その  裁判 のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。

○5  前項の請求期間内及びその  請求 があつたときは、裁判の  執行 は、停止される。

第四百三十条

 検察官又は検察事務官のした  第三十九条第三項 の処分又は  押収 若しくは押収物の  還付 に関する処分に  不服 がある者は、その検察官又は  検察事務官 が所属する  検察庁 の対応する  裁判所 にその処分の  取消 又は変更を  請求 することができる。

○2  司法警察職員のした前項の  処分 に不服がある者は、  司法警察職員 の職務執行地を  管轄 する地方裁判所又は  簡易裁判所 にその処分の  取消 又は変更を  請求 することができる。

○3  前二項の請求については、  行政事件訴訟 に関する法令の  規定 は、これを適用しない。

第四百三十一条

 前二条の請求をするには、  請求書 を管轄裁判所に差し出さなければならない。

第四百三十二条

 第四百二十四条、第四百二十六条及び  第四百二十七条 の規定は、  第四百二十九条 及び第四百三十条の  請求 があつた場合にこれを  準用 する。

第四百三十三条

 この法律により  不服 を申し立てることができない決定又は  命令 に対しては、第四百五条に  規定 する事由があることを  理由 とする場合に限り、  最高裁判所 に特に抗告をすることができる。

○2  前項の抗告の  提起期間 は、五日とする。

第四百三十四条

 第四百二十三条、第四百二十四条及び  第四百二十六条 の規定は、この  法律 に特別の定のある  場合 を除いては、前条第一項の  抗告 についてこれを準用する。

  第四編 再審

第四百三十五条  再審の請求は、左の  場合 において、有罪の  言渡 をした確定判決に対して、その  言渡 を受けた者の利益のために、これをすることができる。

一  原判決の証拠となつた  証拠書類 又は証拠物が  確定判決 により偽造又は  変造 であつたことが証明されたとき。

二  原判決の証拠となつた  証言 、鑑定、  通訳 又は翻訳が  確定判決 により虚偽であつたことが  証明 されたとき。

三  有罪の言渡を受けた者を  誣告 した罪が確定判決により  証明 されたとき。但し、誣告により  有罪 の言渡を受けたときに限る。

四  原判決の証拠となつた  裁判 が確定裁判により  変更 されたとき。

五  特許権、実用新案権、  意匠権 又は商標権を害した罪により  有罪 の言渡をした  事件 について、その権利の  無効 の審決が  確定 したとき、又は無効の  判決 があつたとき。

六  有罪の言渡を受けた者に対して  無罪 若しくは免訴を言い渡し、刑の  言渡 を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は  原判決 において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに  発見 したとき。

七  原判決に関与した  裁判官 、原判決の  証拠 となつた証拠書類の  作成 に関与した  裁判官 又は原判決の  証拠 となつた書面を  作成 し若しくは供述をした  検察官 、検察事務官若しくは  司法警察職員 が被告事件について  職務 に関する罪を犯したことが確定判決により  証明 されたとき。但し、原判決をする前に  裁判官 、検察官、  検察事務官 又は司法警察職員に対して  公訴 の提起があつた  場合 には、原判決をした  裁判所 がその事実を知らなかつたときに限る。

第四百三十六条

 再審の請求は、左の  場合 において、控訴又は  上告 を棄却した  確定判決 に対して、その言渡を受けた者の  利益 のために、これをすることができる。

一  前条第一号又は第二号に  規定 する事由があるとき。

二  原判決又はその証拠となつた  証拠書類 の作成に  関与 した裁判官について  前条第七号 に規定する  事由 があるとき。

○2  第一審の確定判決に対して  再審 の請求をした  事件 について再審の  判決 があつた後は、控訴棄却の  判決 に対しては、再審の  請求 をすることはできない。

○3  第一審又は第二審の  確定判決 に対して再審の  請求 をした事件について  再審 の判決があつた後は、  上告棄却 の判決に対しては、  再審 の請求をすることはできない。

第四百三十七条

 前二条の規定に従い、  確定判決 により犯罪が  証明 されたことを再審の  請求 の理由とすべき  場合 において、その確定判決を得ることができないときは、その  事実 を証明して  再審 の請求をすることができる。但し、  証拠 がないという理由によつて  確定判決 を得ることができないときは、この限りでない。

第四百三十八条

 再審の請求は、  原判決 をした裁判所がこれを  管轄 する。

第四百三十九条

 再審の請求は、左の者がこれをすることができる。

一  検察官

二  有罪の言渡を受けた者

三  有罪の言渡を受けた者の  法定代理人 及び保佐人

四  有罪の言渡を受けた者が  死亡 し、又は心神喪失の  状態 に在る場合には、その  配偶者 、直系の  親族 及び兄弟姉妹

○2  第四百三十五条第七号又は第四百三十六条第一項第二号に  規定 する事由による  再審 の請求は、  有罪 の言渡を受けた者がその罪を犯させた  場合 には、検察官でなければこれをすることができない。

第四百四十条

 検察官以外の者は、再審の  請求 をする場合には、  弁護人 を選任することができる。

○2  前項の規定による  弁護人 の選任は、  再審 の判決があるまでその  効力 を有する。

第四百四十一条

 再審の請求は、刑の  執行 が終り、又はその執行を受けることがないようになつたときでも、これをすることができる。

第四百四十二条

 再審の請求は、刑の  執行 を停止する  効力 を有しない。但し、管轄裁判所に  対応 する検察庁の  検察官 は、再審の  請求 についての裁判があるまで刑の  執行 を停止することができる。

第四百四十三条

 再審の請求は、これを取り下げることができる。

○2  再審の請求を取り下げた者は、  同一 の理由によつては、更に  再審 の請求をすることができない。

第四百四十四条

 第三百六十六条の規定は、  再審 の請求及びその  取下 についてこれを準用する。

第四百四十五条

 再審の請求を受けた  裁判所 は、必要があるときは、  合議体 の構成員に  再審 の請求の  理由 について、事実の  取調 をさせ、又は地方裁判所、  家庭裁判所 若しくは簡易裁判所の  裁判官 にこれを嘱託することができる。この  場合 には、受命裁判官及び  受託裁判官 は、裁判所又は  裁判長 と同一の  権限 を有する。

第四百四十六条

 再審の請求が  法令上 の方式に  違反 し、又は請求権の  消滅後 にされたものであるときは、決定でこれを  棄却 しなければならない。

第四百四十七条

 再審の請求が  理由 のないときは、決定でこれを  棄却 しなければならない。

○2  前項の決定があつたときは、  何人 も、同一の  理由 によつては、更に再審の  請求 をすることはできない。

第四百四十八条

 再審の請求が  理由 のあるときは、再審開始の  決定 をしなければならない。

○2  再審開始の決定をしたときは、  決定 で刑の執行を  停止 することができる。

第四百四十九条

 控訴を棄却した  確定判決 とその判決によつて  確定 した第一審の  判決 とに対して再審の  請求 があつた場合において、  第一審裁判所 が再審の  判決 をしたときは、控訴裁判所は、  決定 で再審の  請求 を棄却しなければならない。

○2  第一審又は第二審の  判決 に対する上告を  棄却 した判決とその  判決 によつて確定した  第一審 又は第二審の  判決 とに対して再審の  請求 があつた場合において、  第一審裁判所 又は控訴裁判所が  再審 の判決をしたときは、  上告裁判所 は、決定で  再審 の請求を  棄却 しなければならない。

第四百五十条

 第四百四十六条、第四百四十七条第一項、  第四百四十八条第一項 又は前条第一項の  決定 に対しては、即時抗告をすることができる。

第四百五十一条

 裁判所は、再審開始の  決定 が確定した  事件 については、第四百四十九条の  場合 を除いては、その審級に従い、更に  審判 をしなければならない。

○2  左の場合には、  第三百十四条第一項本文 及び第三百三十九条第一項第四号の  規定 は、前項の  審判 にこれを適用しない。

一  死亡者又は回復の  見込 がない心神喪失者のために  再審 の請求がされたとき。

二  有罪の言渡を受けた者が、  再審 の判決がある前に、  死亡 し、又は心神喪失の  状態 に陥りその回復の  見込 がないとき。

○3  前項の場合には、  被告人 の出頭がなくても、  審判 をすることができる。但し、弁護人が  出頭 しなければ開廷することはできない。

○4  第二項の場合において、  再審 の請求をした者が  弁護人 を選任しないときは、  裁判長 は、職権で  弁護人 を附しなければならない。

第四百五十二条

 再審においては、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

第四百五十三条

 再審において無罪の  言渡 をしたときは、官報及び  新聞紙 に掲載して、その  判決 を公示しなければならない。

  第五編 非常上告

第四百五十四条  検事総長は、判決が  確定 した後その事件の  審判 が法令に  違反 したことを発見したときは、  最高裁判所 に非常上告をすることができる。

第四百五十五条

 非常上告をするには、その理由を  記載 した申立書を  最高裁判所 に差し出さなければならない。

第四百五十六条

 公判期日には、検察官は、  申立書 に基いて陳述をしなければならない。

第四百五十七条

 非常上告が理由のないときは、  判決 でこれを棄却しなければならない。

第四百五十八条

 非常上告が理由のあるときは、左の  区別 に従い、判決をしなければならない。

一  原判決が法令に  違反 したときは、その違反した  部分 を破棄する。但し、  原判決 が被告人のため  不利益 であるときは、これを破棄して、  被告事件 について更に判決をする。

二  訴訟手続が法令に  違反 したときは、その違反した  手続 を破棄する。

第四百五十九条

 非常上告の判決は、  前条第一号但書 の規定によりされたものを除いては、その  効力 を被告人に及ぼさない。

第四百六十条

 裁判所は、申立書に  包含 された事項に限り、  調査 をしなければならない。

○2  裁判所は、裁判所の  管轄 、公訴の  受理 及び訴訟手続に関しては、  事実 の取調をすることができる。この  場合 には、第三百九十三条第三項の  規定 を準用する。

  第六編 略式手続

第四百六十一条  簡易裁判所は、検察官の  請求 により、その管轄に属する  事件 について、公判前、  略式命令 で、百万円以下の  罰金 又は科料を科することができる。この  場合 には、刑の執行猶予をし、  没収 を科し、その他付随の  処分 をすることができる。

第四百六十一条の二

 検察官は、略式命令の  請求 に際し、被疑者に対し、あらかじめ、  略式手続 を理解させるために  必要 な事項を  説明 し、通常の  規定 に従い審判を受けることができる旨を告げた上、  略式手続 によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。

○2  被疑者は、略式手続によることについて  異議 がないときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。

第四百六十二条

 略式命令の請求は、  公訴 の提起と  同時 に、書面でこれをしなければならない。

○2  前項の書面には、  前条第二項 の書面を  添附 しなければならない。

第四百六十三条

 前条の請求があつた  場合 において、その事件が  略式命令 をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると  思料 するときは、通常の  規定 に従い、審判をしなければならない。

○2  検察官が、第四百六十一条の二に定める  手続 をせず、又は前条第二項に  違反 して略式命令を  請求 したときも、前項と  同様 である。

○3  裁判所は、前二項の  規定 により通常の  規定 に従い審判をするときは、直ちに  検察官 にその旨を通知しなければならない。

○4  第一項及び第二項の  場合 には、第二百七十一条の  規定 の適用があるものとする。但し、  同条第二項 に定める期間は、  前項 の通知があつた日から  二箇月 とする。

第四百六十三条の二

 前条の場合を除いて、  略式命令 の請求があつた日から  四箇月以内 に略式命令が  被告人 に告知されないときは、  公訴 の提起は、さかのぼつてその  効力 を失う。

○2  前項の場合には、  裁判所 は、決定で、  公訴 を棄却しなければならない。  略式命令 が既に検察官に  告知 されているときは、略式命令を取り消した上、その  決定 をしなければならない。

○3  前項の決定に対しては、  即時抗告 をすることができる。

第四百六十四条

 略式命令には、罪となるべき事実、  適用 した法令、科すべき刑及び  附随 の処分並びに  略式命令 の告知があつた日から  十四日以内 に正式裁判の  請求 をすることができる旨を示さなければならない。

第四百六十五条

 略式命令を受けた者又は検察官は、その  告知 を受けた日から十四日以内に  正式裁判 の請求をすることができる。

○2  正式裁判の請求は、  略式命令 をした裁判所に、  書面 でこれをしなければならない。正式裁判の  請求 があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を  検察官 又は略式命令を受けた者に  通知 しなければならない。

第四百六十六条

 正式裁判の請求は、  第一審 の判決があるまでこれを取り下げることができる。

第四百六十七条

 第三百五十三条、第三百五十五条乃至第三百五十七条、  第三百五十九条 、第三百六十条及び  第三百六十一条乃至第三百六十五条 の規定は、  正式裁判 の請求又はその  取下 についてこれを準用する。

第四百六十八条

 正式裁判の請求が  法令上 の方式に  違反 し、又は請求権の  消滅後 にされたものであるときは、決定でこれを  棄却 しなければならない。この決定に対しては、  即時抗告 をすることができる。

○2  正式裁判の請求を  適法 とするときは、通常の  規定 に従い、審判をしなければならない。

○3  前項の場合においては、  略式命令 に拘束されない。

第四百六十九条

 正式裁判の請求により  判決 をしたときは、略式命令は、その  効力 を失う。

第四百七十条

 略式命令は、正式裁判の  請求期間 の経過又はその  請求 の取下により、  確定判決 と同一の  効力 を生ずる。正式裁判の  請求 を棄却する  裁判 が確定したときも、  同様 である。

  第七編 裁判の執行

第四百七十一条  裁判は、この法律に  特別 の定のある場合を除いては、  確定 した後これを執行する。

第四百七十二条

 裁判の執行は、その  裁判 をした裁判所に  対応 する検察庁の  検察官 がこれを指揮する。但し、  第七十条第一項但書 の場合、  第百八条第一項但書 の場合その他その  性質上裁判所 又は裁判官が  指揮 すべき場合は、この限りでない。

○2  上訴の裁判又は  上訴 の取下により  下級 の裁判所の  裁判 を執行する  場合 には、上訴裁判所に  対応 する検察庁の  検察官 がこれを指揮する。但し、  訴訟記録 が下級の  裁判所 又はその裁判所に  対応 する検察庁に在るときは、その  裁判所 に対応する  検察庁 の検察官が、これを  指揮 する。

第四百七十三条

 裁判の執行の  指揮 は、書面でこれをし、これに  裁判書 又は裁判を  記載 した調書の  謄本 又は抄本を添えなければならない。但し、刑の  執行 を指揮する  場合 を除いては、裁判書の  原本 、謄本若しくは  抄本 又は裁判を  記載 した調書の  謄本 若しくは抄本に  認印 して、これをすることができる。

第四百七十四条

 二以上の主刑の  執行 は、罰金及び  科料 を除いては、その重いものを先にする。但し、検察官は、重い刑の  執行 を停止して、他の刑の  執行 をさせることができる。

第四百七十五条

 死刑の執行は、  法務大臣 の命令による。

○2  前項の命令は、  判決確定 の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、  上訴権回復 若しくは再審の  請求 、非常上告又は  恩赦 の出願若しくは  申出 がされその手続が  終了 するまでの期間及び  共同被告人 であつた者に対する判決が  確定 するまでの期間は、これをその  期間 に算入しない。

第四百七十六条

 法務大臣が死刑の  執行 を命じたときは、五日以内にその  執行 をしなければならない。

第四百七十七条

 死刑は、検察官、  検察事務官 及び刑事施設の長又はその  代理者 の立会いの上、これを  執行 しなければならない。

○2  検察官又は刑事施設の長の  許可 を受けた者でなければ、刑場に入ることはできない。

第四百七十八条

 死刑の執行に立ち会つた  検察事務官 は、執行始末書を作り、  検察官 及び刑事施設の長又はその  代理者 とともに、これに署名押印しなければならない。

第四百七十九条

 死刑の言渡を受けた者が  心神喪失 の状態に在るときは、  法務大臣 の命令によつて  執行 を停止する。

○2  死刑の言渡を受けた  女子 が懐胎しているときは、  法務大臣 の命令によつて  執行 を停止する。

○3  前二項の規定により  死刑 の執行を  停止 した場合には、  心神喪失 の状態が  回復 した後又は出産の後に  法務大臣 の命令がなければ、  執行 することはできない。

○4  第四百七十五条第二項の規定は、  前項 の命令についてこれを  準用 する。この場合において、  判決確定 の日とあるのは、心神喪失の  状態 が回復した日又は  出産 の日と読み替えるものとする。

第四百八十条

 懲役、禁錮又は  拘留 の言渡を受けた者が  心神喪失 の状態に在るときは、刑の  言渡 をした裁判所に  対応 する検察庁の  検察官 又は刑の言渡を受けた者の  現在地 を管轄する  地方検察庁 の検察官の  指揮 によつて、その状態が  回復 するまで執行を  停止 する。

第四百八十一条

 前条の規定により刑の  執行 を停止した  場合 には、検察官は、刑の  言渡 を受けた者を監護義務者又は  地方公共団体 の長に引き渡し、病院その他の  適当 な場所に入れさせなければならない。

○2  刑の執行を  停止 された者は、前項の  処分 があるまでこれを刑事施設に  留置 し、その期間を  刑期 に算入する。

第四百八十二条

 懲役、禁錮又は  拘留 の言渡を受けた者について左の  事由 があるときは、刑の言渡をした  裁判所 に対応する  検察庁 の検察官又は刑の  言渡 を受けた者の現在地を  管轄 する地方検察庁の  検察官 の指揮によつて  執行 を停止することができる。

一  刑の執行によつて、著しく  健康 を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。

二  年齢七十年以上であるとき。

三  受胎後百五十日以上であるとき。

四  出産後六十日を経過しないとき。

五  刑の執行によつて  回復 することのできない不利益を生ずる虞があるとき。

六  祖父母又は父母が  年齢七十年以上 又は重病若しくは  不具 で、他にこれを保護する  親族 がないとき。

七  子又は孫が幼年で、他にこれを  保護 する親族がないとき。

八  その他重大な  事由 があるとき。

第四百八十三条

 第五百条に規定する  申立 の期間内及びその  申立 があつたときは、訴訟費用の  負担 を命ずる裁判の  執行 は、その申立についての  裁判 が確定するまで  停止 される。

第四百八十四条

 死刑、懲役、  禁錮 又は拘留の  言渡 しを受けた者が拘禁されていないときは、  検察官 は、執行のためこれを呼び出さなければならない。  呼出 しに応じないときは、収容状を発しなければならない。

第四百八十五条

 死刑、懲役、  禁錮 又は拘留の  言渡 しを受けた者が逃亡したとき、又は  逃亡 するおそれがあるときは、検察官は、直ちに  収容状 を発し、又は司法警察員にこれを発せしめることができる。

第四百八十六条

 死刑、懲役、  禁錮 又は拘留の  言渡 しを受けた者の現在地が分からないときは、  検察官 は、検事長にその者の  刑事施設 への収容を  請求 することができる。

○2  請求を受けた検事長は、その  管内 の検察官に  収容状 を発せしめなければならない。

第四百八十七条

 収容状には、刑の言渡しを受けた者の  氏名 、住居、  年齢 、刑名、  刑期 その他収容に  必要 な事項を  記載 し、検察官又は  司法警察員 が、これに記名押印しなければならない。

第四百八十八条

 収容状は、勾引状と  同一 の効力を有する。

第四百八十九条

 収容状の執行については、  勾引状 の執行に関する  規定 を準用する。

第四百九十条

 罰金、科料、  没収 、追徴、  過料 、没取、  訴訟費用 、費用賠償又は  仮納付 の裁判は、  検察官 の命令によつてこれを  執行 する。この命令は、  執行力 のある債務名義と  同一 の効力を有する。

○2  前項の裁判の  執行 は、民事執行法 (  昭和五十四年法律第四号 )その他強制執行の  手続 に関する法令の  規定 に従つてする。ただし、執行前に  裁判 の送達をすることを要しない。

第四百九十一条

 没収又は租税その他の  公課 若しくは専売に関する  法令 の規定により言い渡した  罰金 若しくは追徴は、刑の  言渡 を受けた者が判決の  確定 した後死亡した  場合 には、相続財産についてこれを  執行 することができる。

第四百九十二条

 法人に対して罰金、  科料 、没収又は  追徴 を言い渡した場合に、その  法人 が判決の  確定 した後合併によつて  消滅 したときは、合併の  後存続 する法人又は  合併 によつて設立された  法人 に対して執行することができる。

第四百九十三条

 第一審と第二審とにおいて、  仮納付 の裁判があつた  場合 に、第一審の  仮納付 の裁判について既に  執行 があつたときは、その執行は、これを  第二審 の仮納付の  裁判 で納付を命ぜられた  金額 の限度において、  第二審 の仮納付の  裁判 についての執行とみなす。

○2  前項の場合において、  第一審 の仮納付の  裁判 の執行によつて得た  金額 が第二審の  仮納付 の裁判で  納付 を命ぜられた金額を超えるときは、その  超過額 は、これを還付しなければならない。

第四百九十四条

 仮納付の裁判の  執行 があつた後に、罰金、  科料 又は追徴の  裁判 が確定したときは、その  金額 の限度において刑の  執行 があつたものとみなす。

○2  前項の場合において、  仮納付 の裁判の  執行 によつて得た金額が  罰金 、科料又は  追徴 の金額を超えるときは、その  超過額 は、これを還付しなければならない。

第四百九十五条

 上訴の提起期間中の  未決勾留 の日数は、  上訴申立後 の未決勾留の  日数 を除き、全部これを  本刑 に通算する。

○2  上訴申立後の未決勾留の  日数 は、左の場合には、  全部 これを本刑に  通算 する。

一  検察官が上訴を申し立てたとき。

二  検察官以外の者が上訴を申し立てた  場合 においてその上訴審において  原判決 が破棄されたとき。

○3  前二項の規定による  通算 については、未決勾留の  一日 を刑期の  一日 又は金額の  四千円 に折算する。

○4  上訴裁判所が原判決を  破棄 した後の未決勾留は、  上訴中 の未決勾留日数に準じて、これを  通算 する。

第四百九十六条

 没収物は、検察官がこれを  処分 しなければならない。

第四百九十七条

 没収を執行した  後三箇月以内 に、権利を有する者が  没収物 の交付を  請求 したときは、検察官は、  破壊 し、又は廃棄すべき物を除いては、これを  交付 しなければならない。

○2  没収物を処分した  後前項 の請求があつた  場合 には、検察官は、  公売 によつて得た代価を  交付 しなければならない。

第四百九十八条

 偽造し、又は変造された物を  返還 する場合には、  偽造 又は変造の  部分 をその物に表示しなければならない。

○2  偽造し、又は変造された物が  押収 されていないときは、これを提出させて、  前項 に規定する  手続 をしなければならない。但し、その物が公務所に属するときは、  偽造 又は変造の  部分 を公務所に  通知 して相当な  処分 をさせなければならない。

第四百九十九条

 押収物の還付を受けるべき者の  所在 が判らないため、又はその他の事由によつて、その物を  還付 することができない場合には、  検察官 は、その旨を政令で定める  方法 によつて公告しなければならない。

○2  公告をしたときから六箇月以内に  還付 の請求がないときは、その物は、  国庫 に帰属する。

○3  前項の期間内でも、  価値 のない物は、これを廃棄し、  保管 に不便な物は、これを  公売 してその代価を  保管 することができる。

第五百条

 訴訟費用の負担を命ぜられた者は、  貧困 のためこれを完納することができないときは、  裁判所 の規則の定めるところにより、  訴訟費用 の全部又は  一部 について、その裁判の  執行 の免除の  申立 をすることができる。

○2  前項の申立は、  訴訟費用 の負担を命ずる  裁判 が確定した  後二十日以内 にこれをしなければならない。

第五百条の二

 被告人又は被疑者は、  検察官 に訴訟費用の  概算額 の予納をすることができる。

第五百条の三

 検察官は、訴訟費用の  裁判 を執行する  場合 において、前条の  規定 による予納がされた  金額 があるときは、その予納がされた  金額 から当該訴訟費用の額に  相当 する金額を  控除 し、当該金額を  当該訴訟費用 の納付に充てる。

○2  前項の規定により  予納 がされた金額から  訴訟費用 の額に相当する  金額 を控除して  残余 があるときは、その残余の額は、その  予納 をした者の請求により  返還 する。

第五百条の四

 次の各号のいずれかに  該当 する場合には、  第五百条 の二の規定による  予納 がされた金額は、その  予納 をした者の請求により  返還 する。

一  第三十八条の二の規定により  弁護人 の選任が  効力 を失つたとき。

二  訴訟手続が終了する  場合 において、被告人に  訴訟費用 の負担を命ずる  裁判 がなされなかつたとき。

三  訴訟費用の負担を命ぜられた者が、  訴訟費用 の全部について、その  裁判 の執行の  免除 を受けたとき。

第五百一条

 刑の言渡を受けた者は、  裁判 の解釈について疑があるときは、  言渡 をした裁判所に  裁判 の解釈を求める  申立 をすることができる。

第五百二条

 裁判の執行を受ける者又はその  法定代理人 若しくは保佐人は、  執行 に関し検察官のした  処分 を不当とするときは、  言渡 をした裁判所に  異議 の申立をすることができる。

第五百三条

 第五百条及び前二条の  申立 ては、決定があるまでこれを取り下げることができる。

○2  第三百六十六条の規定は、  第五百条 及び前二条の  申立 て及びその取下げについてこれを  準用 する。

第五百四条

 第五百条、第五百一条及び  第五百二条 の申立てについてした  決定 に対しては、即時抗告をすることができる。

第五百五条

 罰金又は科料を  完納 することができない場合における  労役場留置 の執行については、刑の  執行 に関する規定を  準用 する。

第五百六条

 第四百九十条第一項の裁判の  執行 の費用は、  執行 を受ける者の負担とし、  民事執行法 その他強制執行の  手続 に関する法令の  規定 に従い、執行と  同時 にこれを取り立てなければならない。

第五百七条

 検察官又は裁判所若しくは  裁判官 は、裁判の  執行 に関して必要があると認めるときは、  公務所 又は公私の  団体 に照会して  必要 な事項の  報告 を求めることができる。

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