日本国民 は、 正当 に 選挙 された 国会における代表者 を通じて行動し、われらとわれらの 子孫 のために、諸 国民 との 協和 による成果と、わが国全土にわたつて 自由 のもたらす 恵沢 を確保し、政府の行為によつて再び 戦争 の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに 主権 が 国民 に存することを宣言し、この 憲法 を確定する。
そもそも 国政 は、 国民 の 厳粛な信託 によるものであつて、その権威は 国民 に由来し、その 権力 は 国民 の代表者がこれを 行使 し、その福利は 国民 がこれを享受する。これは 人類普遍 の原理であり、この 憲法 は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の 憲法 、 法令 及び 詔勅 を排除する。
日本国民 は、 恒久の平和 を念願し、 人間相互 の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸 国民 の 公正 と 信義 に信頼して、われらの 安全 と 生存 を 保持 しようと決意した。われらは、平和を 維持 し、 専制 と 隷従 、 圧迫 と 偏狭 を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、 名誉ある地位 を占めたいと思ふ。われらは、全世界の 国民 が、ひとしく 恐怖 と 欠乏 から免かれ、 平和のうちに生存 する 権利 を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して 他国 を 無視 してはならないのであつて、 政治道徳の法則 は、 普遍的 なものであり、この法則に従ふことは、 自国の主権 を 維持 し、他国と 対等関係 に立たうとする 各国の責務 であると信ずる。
日本国民 は、 国家の名誉 にかけ、全力をあげてこの 崇高 な 理想 と 目的 を達成することを誓ふ。
第一章 天皇
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。第二条
皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。第三条
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。第四条
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。○2 天皇 は、 法律 の定めるところにより、その 国事 に関する行為を 委任 することができる。
第五条 皇室典範 第五条
の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。第六条
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。○2 天皇 は、 内閣 の 指名 に基いて、 最高裁判所 の 長 たる 裁判官 を 任命 する。
第七条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正 、 法律 、 政令 及び 条約 を 公布 すること。
二 国会 を 召集 すること。
三 衆議院 を 解散 すること。
四 国会議員 の 総選挙 の 施行 を 公示 すること。
五 国務大臣 及び 法律 の定めるその他の 官吏 の 任免 並びに 全権委任状 及び 大使 及び 公使 の 信任状 を 認証 すること。
六 大赦 、 特赦 、 減刑 、 刑の執行 の 免除 及び 復権 を 認証 すること。
七 栄典 を授与すること。
八 批准書 及び 法律 の定めるその他の 外交文書 を 認証 すること。
九 外国 の 大使 及び 公使 を 接受 すること。
十 儀式 を行ふこと。
第八条
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。○2 前項の目的を達するため、 陸海空軍 その他の 戦力 は、これを 保持 しない。国の 交戦権 は、これを認めない。
第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。第十一条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。○2 華族 その他の 貴族 の 制度 は、これを認めない。
○3 栄誉 、 勲章 その他の 栄典 の授与は、いかなる 特権 も伴はない。 栄典 の授与は、現にこれを有し、又は 将来 これを受ける者の一代に限り、その 効力 を有する。
第十五条
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。○2 すべて 公務員 は、 全体 の 奉仕者 であつて、 一部 の 奉仕者 ではない。
○3 公務員 の 選挙 については、 成年者 による 普通選挙 を 保障 する。
○4 すべて 選挙 における 投票 の 秘密 は、これを侵してはならない。 選挙人 は、その 選択 に関し 公的 にも 私的 にも 責任 を問はれない。
第十六条
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。第十七条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。第十八条
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。○2 何人 も、 宗教上 の行為、 祝典 、 儀式 又は 行事 に 参加 することを 強制 されない。
○3 国及びその 機関 は、 宗教教育 その他いかなる 宗教的活動 もしてはならない。
第二十一条
集会、 結社 及び 言論 、 出版 その他一切の 表現 の自由は、これを保障する。○2 検閲 は、これをしてはならない。 通信 の 秘密 は、これを侵してはならない。
第二十二条
何人も、 公共の福祉 に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。○2 何人 も、 外国 に 移住 し、又は 国籍 を 離脱 する 自由 を侵されない。
第二十三条
学問の 自由 は、これを 保障 する。第二十四条
婚姻は、 両性 の合意のみに基いて成立し、 夫婦 が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、 維持 されなければならない。○2 配偶者 の 選択 、 財産権 、 相続 、 住居 の 選定 、離婚並びに 婚姻 及び 家族 に関するその他の事項に関しては、 法律 は、 個人 の 尊厳 と 両性 の 本質的平等 に 立脚 して、 制定 されなければならない。
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。○2 国は、すべての 生活部面 について、 社会福祉 、 社会保障 及び 公衆衛生 の 向上 及び 増進 に努めなければならない。
第二十六条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく 教育 を受ける権利を有する。○2 すべて 国民 は、 法律 の定めるところにより、その 保護 する 子女 に 普通教育 を受けさせる 義務 を負ふ。 義務教育 は、これを 無償 とする。
第二十七条
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。○2 賃金 、 就業時間 、 休息 その他の 勤労条件 に関する 基準 は、 法律 でこれを定める。
○3 児童 は、これを 酷使 してはならない。
第二十八条
勤労者の 団結 する権利及び 団体交渉 その他の 団体行動 をする権利は、これを保障する。第二十九条
財産権は、これを侵してはならない。○2 財産権 の 内容 は、 公共 の 福祉 に 適合 するやうに、 法律 でこれを定める。
○3 私有財産 は、 正当 な 補償 の下に、これを 公共 のために用ひることができる。
第三十条
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。第三十一条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。第三十二条
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。第三十三条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。第三十四条
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。第三十五条
何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。○2 捜索 又は 押収 は、 権限 を有する 司法官憲 が発する各別の 令状 により、これを行ふ。
第三十六条
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。第三十七条
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。○2 刑事被告人 は、すべての 証人 に対して 審問 する 機会 を充分に与へられ、又、 公費 で自己のために 強制的手続 により 証人 を求める 権利 を有する。
○3 刑事被告人 は、いかなる場合にも、 資格 を有する 弁護人 を 依頼 することができる。 被告人 が自らこれを 依頼 することができないときは、国でこれを附する。
第三十八条
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。○2 強制 、 拷問 若しくは 脅迫 による 自白 又は 不当 に長く 抑留 若しくは 拘禁 された後の 自白 は、これを 証拠 とすることができない。
○3 何人 も、自己に 不利益 な唯一の 証拠 が 本人 の 自白 である場合には、 有罪 とされ、又は 刑罰 を科せられない。
第三十九条
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。第四十条
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
第四章 国会
第四十一条 国会は、国権の 最高機関 であつて、国の唯一の 立法機関 である。第四十二条
国会は、 衆議院 及び 参議院 の両議院でこれを構成する。第四十三条
両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。○2 両議院の議員の定数は、 法律 でこれを定める。
第四十四条
両議院の 議員 及びその 選挙人 の 資格 は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。第四十五条
衆議院議員の任期は、 四年 とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。第四十六条
参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。第四十七条
選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。第四十八条
何人も、 同時 に両議院の議員たることはできない。第四十九条
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。第五十条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。第五十一条
両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、 院外 で責任を問はれない。第五十二条
国会の常会は、毎年 一回 これを召集する。第五十三条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の 四分の一以上 の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。第五十四条
衆議院が解散されたときは、解散の日から 四十日 以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から 三十日 以内に、国会を召集しなければならない。○2 衆議院 が 解散 されたときは、参議院は、同時に 閉会 となる。但し、 内閣 は、国に 緊急の必要 があるときは、参議院の 緊急集会 を求めることができる。
○3 前項但書の 緊急集会 において採られた措置は、臨時のものであつて、次の 国会開会 の後 十日 以内に、衆議院の 同意 がない場合には、その 効力 を失ふ。
第五十五条
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の 三分の二 以上の多数による議決を必要とする。第五十六条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。○2 両議院の議事は、この憲法に 特別の定 のある場合を除いては、 出席 議員の 過半数 でこれを決し、 可否同数 のときは、 議長 の決するところによる。
第五十七条
両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。○2 両議院は、各々その会議の記録を 保存 し、 秘密会 の記録の中で特に 秘密 を要すると認められるもの以外は、これを 公表 し、且つ一般に 頒布 しなければならない。
○3 出席議員 の 五分の一 以上の 要求 があれば、各議員の 表決 は、これを 会議録 に記載しなければならない。
第五十八条
両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。○2 両議院は、各々その会議その他の 手続 及び内部の 規律 に関する 規則 を定め、又、 院内 の 秩序 をみだした議員を 懲罰 することができる。但し、議員を 除名 するには、 出席議員 の 三分の二 以上の 多数 による 議決 を 必要 とする。
第五十九条
法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。○2 衆議院 で可決し、参議院でこれと異なつた 議決 をした 法律 案は、衆議院で 出席 議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、 法律 となる。
○3 前項の規定は、 法律 の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
○4 参議院が、衆議院の可決した 法律 案を受け取つた後、 国会 休会中の期間を除いて六十日以内に、 議決 しないときは、衆議院は、参議院がその 法律 案を否決したものとみなすことができる。
第六十条
予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。○2 予算について、参議院で衆議院と異なつた 議決 をした場合に、 法律 の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、 国会 休会中の期間を除いて三十日以内に、 議決 しないときは、衆議院の 議決 を 国会 の 議決 とする。
第六十一条
条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。第六十二条
両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の 出頭 及び証言並びに記録の 提出 を要求することができる。第六十三条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。第六十四条
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。○2 弾劾 に関する事項は、 法律 でこれを定める。
第五章 内閣
第六十五条 行政権は、内閣に属する。 第六十五条第六十六条
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。○2 内閣総理大臣その他の 国務大臣 は、 文民 でなければならない。
○3 内閣は、 行政権 の 行使 について、 国会 に対し 連帯 して 責任 を負ふ。
第六十七条
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。○2 衆議院 と 参議院 とが異なつた 指名 の 議決 をした場合に、 法律 の定めるところにより、両議院の協議会を開いても 意見が一致 しないとき、又は衆議院が 指名 の 議決 をした後、 国会休会中 の期間を除いて 十日 以内に、参議院が、 指名 の 議決 をしないときは、 衆議院 の議決を 国会 の 議決 とする。
第六十八条
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。○2 内閣総理大臣 は、任意に国務大臣を 罷免 することができる。
第六十九条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、 十日以内 に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。第七十条
内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、 総辞職 をしなければならない。第七十一条
前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。第七十二条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。第七十三条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。一 法律 を 誠実 に 執行 し、 国務 を総理すること。
二 外交関係 を処理すること。
三 条約 を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、 国会 の 承認 を経ることを 必要 とする。
四 法律 の定める 基準 に従ひ、 官吏 に関する事務を 掌理 すること。
五 予算 を作成して 国会 に提出すること。
六 この 憲法 及び 法律 の規定を実施するために、 政令 を 制定 すること。但し、 政令 には、特にその 法律 の 委任 がある場合を除いては、 罰則 を設けることができない。
七 大赦 、 特赦 、 減刑 、刑の 執行 の 免除 及び 復権 を決定すること。
第七十四条
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。第七十五条
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第六章 司法
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。○2 特別裁判所 は、これを設置することができない。 行政機関 は、 終審 として裁判を行ふことができない。
○3 すべて 裁判官 は、その 良心 に従ひ独立してその職権を行ひ、この 憲法 及び 法律 にのみ拘束される。
第七十七条
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。○2 検察官は、 最高裁判所 の定める 規則 に従はなければならない。
○3 最高裁判所 は、 下級裁判所 に関する 規則 を定める 権限 を、 下級裁判所 に 委任 することができる。
第七十八条
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。第七十九条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。○2 最高裁判所 の 裁判官 の 任命 は、その 任命 後初めて行はれる 衆議院議員総選挙 の際 国民 の 審査 に付し、その後 十年 を経過した後初めて行はれる 衆議院議員総選挙 の際更に審査に付し、その後も同様とする。
○3 前項の場合において、 投票者 の多数が 裁判官 の 罷免 を可とするときは、その 裁判官 は、 罷免 される。
○4 審査に関する事項は、 法律 でこれを定める。
○5 最高裁判所 の 裁判官 は、 法律 の定める年齢に達した時に 退官 する。
○6 最高裁判所 の 裁判官 は、すべて定期に 相当額 の 報酬 を受ける。この報酬は、在任中、これを 減額 することができない。
第八十条
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。○2 下級 裁判所 の 裁判官 は、すべて定期に 相当額の報酬 を受ける。この報酬は、在任中、これを 減額 することができない。
第八十一条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。第八十二条
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。○2 裁判所 が、 裁判官 の 全員一致 で、 公の秩序 又は 善良の風俗 を害する虞があると決した場合には、対審は、 公開 しないでこれを行ふことができる。但し、 政治犯罪 、 出版 に関する 犯罪 又はこの憲法 第三章 で 保障 する 国民 の 権利 が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを 公開 しなければならない。
第七章 財政
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。第八十四条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。第八十五条
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。第八十六条
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。第八十七条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。○2 すべて予備費の支出については、 内閣 は、事後に 国会 の承諾を得なければならない。
第八十八条
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。第九十条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。○2 会計検査院 の組織及び 権限 は、 法律 でこれを定める。
第九十一条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
第八章 地方自治
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。第九十三条
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。○2 地方公共団体 の 長 、その議会の 議員 及び 法律 の定めるその他の 吏員 は、その地方 公共団体 の 住民 が、 直接 これを 選挙 する。
第九十四条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。第九十五条
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
第九章 改正
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。○2 憲法改正 について前項の 承認 を経たときは、 天皇 は、 国民 の名で、この 憲法 と一体を成すものとして、直ちにこれを 公布 する。
第十章 最高法規
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。第九十八条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。○2 日本国 が締結した 条約 及び確立された 国際法規 は、これを 誠実 に遵守することを 必要 とする。
第九十九条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
第十一章 補則
第百条 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。○2 この 憲法 を施行するために 必要 な 法律 の 制定 、 参議院議員 の 選挙 及び 国会召集 の 手続 並びにこの 憲法 を施行するために 必要 な 準備手続 は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。
第百一条
この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。第百二条
この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。第百三条
この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。